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東京地方裁判所 昭和45年(借チ)2006号 決定

〔主文〕申立人が相手方から賃借中の別紙目録(一)記載の土地331.47平方米(一〇〇坪二合七勺)のうち桜台一丁目四二番一に属する部分189.09平方米(五七坪二合)の土地賃借権を東京都練馬区桜台一丁目四二番地阿久津源八に譲渡することを許可する。

〔理由〕(申立の要旨)

1 申立人は、相手方から、別紙目録(一)記載の土地一〇〇坪二合七勺を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、右借地のうち桜台一丁目四二番一に属する五七坪二合(以下本件土地という。)の上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有し、桜台一丁目四二番二に属する四三坪七勺の上に木造瓦葺平家建居宅一棟床面積一八坪一合二勺を所有している。資料は、昭和四五年四月一日以降3.3平方米当り一ケ月八五円である。

2 主文掲記の阿久津源八は、申立人の長女怜子の夫で、本件建物に居住し、申立人は、前記木造平家建の建物に居住している。

3 申立人は、本件建物と前記土地賃借権のうち本件土地に関する借地権を阿久津源八に譲渡したいか、土地賃借権の譲渡につき相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によれば申立の要旨として掲げた前記1、2の事実のほか、申立人が阿久津源八に本件土地賃借権を譲渡しても相手方の不利になるおそれがないと認められるので、本件申立は、これを許可すべきである。(本件借地契約の存続期間についてはこれを明らかにする資料がない。)

2 附随処分

本件の資料によると、申立人は、相手方から賃借中の別紙目録(一)記載の土地一〇〇坪二合七勺のうち桜台一丁目四二番二に属する四三坪七勺上に申立の要旨1に記載した木造平家建居宅一棟を所有してこれに居住するほか、その余の部分(本件土地)に木造瓦葺平家建居宅一棟床面積一七坪七合五勺(以下旧建物という。)を所有してこれに阿久津源八一家(阿久津源八が申立人の長女怜子の夫であることは前に認定したとおりである。)を居住せしめていたところ、昭和三九年四月旧建物を取り毀し、そのあとに本件建物を建築したこと、本件建物は阿久津源八名義で確認申請がなされたが、相手方の抗議を受けたため申立人名義で所有権保存登記を経由したこと、一方、相手方は、申立人が阿久津源八に本件土地を転貸したとし、また、借地契約の目的が木造建物所有であるのにかかわらず、鉄骨造の建物を建築したことなどを理由に、昭和四〇年一月一七日申立人到達の書面で借地契約を解除し、当庁に建物収去土地明渡等の訴を提起し、同年一二月二四日左記趣旨の裁判上の和解が成立したことが認められる。

(一) 別紙目録(一)記載の土地一〇〇坪二合七勺につき申立人が賃借権を有することを認める。

(二) 申立人および阿久津源八は、連帯して、相手方および当時の賃貸人らに対し、示談金二〇〇万円を内金五〇万円は昭和四一年一月末日かぎり、内金五〇万円は同年三月末日かぎり、残額一〇〇万円は同年一月から毎月末日かぎり一万円宛支払うこと、右二〇〇万円のうち一六〇万円を滞りなく支払つたときは残額の支払を免除する。

右示談金の趣旨が何を目的としたものであるかは必ずしも明かにしえないとはいえ、借地権の存続を図ることがその根幹をなしていたことは争う余地がないであろう。ところで、阿久津源八は、申立人の長女の夫であり、従来旧建物に居住していたのであるから、同人に対する転貸を理由とする解除は排斤されるべきであり、また、借地契約の目的が木造建物所有であつても、特段の事情のないかぎり非堅固建物所有と解すべく、本件建物が堅固建物か非堅固建物かにつき和解当時疑義があつたにせよ、それは疑義に止まり、本件建物は、鉄骨造とはいえ、軽量鉄骨造であるので非堅固建物というべく、結局、用法違反を理由とする解除も否定されるであろう。なお、増改築制限に関する特約違反を理由とする解除の主張はなされなかつたのであるから、この点は問題にされなかつたものと思われる。

本件借地権譲渡許可にともなう財産上の給付を考える場合相手方らのなした解除が肯認し難いものであることと、前記示談金の額を考慮に入れるべきである。鑑定委員会は、土地賃借権を身分関係のない第三者に譲渡する場合の財産上の給付は借地権価格の一〇%が通常であるとし、当裁判所も従来その程度の財産上の給付を命じているので、本件土地賃借権譲渡許可にともなう財産上の給付は、一般第三者に譲渡する場合は、同委員会の評価した借地権価格(3.3平方米一九万円)によると一〇八万円強となる。また、増改築制限に関する特約がある場合、本件の如き改築を許可する場合の財産上の給付は、当裁判所の従来の例によれば、本件建物が賃貸用の共同住宅であることを考慮し、更地価格の3.5%程度を相当とするので、鑑定委員会の評価による更地価格(3.3平方米二七万円)に基くと、給付額は約五四万円となる。従つて、申立人が、現在、本件土地賃借権を一般第三者に譲渡し、譲渡を受けた者が旧建物を本件建物に改築する場合の財産上の給付は合計約一六二万円である。東京都内の地価が年々騰貴していることは公知の事実であり、従つて、和解当時の本件土地の地価は現在より安かつたであろうから、和解当時の右財産上の給付は右の額より下廻つていたといえる。かつ、借地権を身分関係のある者に譲渡する場合の譲渡承諾料は、一般第三者に譲渡する場合に較べて低額であるのが通常であり、身分関係の如何によつては、零の場合もあり、また、増改築制限に関する特約がないことを明らかな場合には、増改築承諾料を支払う必要もない。右のように、相手方らのなした解除は肯認し難いばかりでなく、阿久津源八は、申立人の長女の夫にして、従前旧建物に居住し、現に本件建物に居住している者であり、かりに、増改築制限に関する特約があるとしても、申立人が阿久津源八に本件建物および本件土地賃借権を譲渡することによる申立人・相手方間の利益の衡平は、実質的に見れば、前記示談金により十分考慮されてなお余りあるといつてよいので、本件の場合、申立人に財産上の給付を命ずるのは相当でなく、借地条件を変更する要もない。 (小山俊彦)

目録

(一) 東京都練馬区桜台一丁目四二番一

宅地のうち189.09平方米(57坪2合)

同所同番二宅地のうち142.38平方米(43坪7勺)

合計 331.47平方米(100坪2合7勺)

(二) 右(一)地上所在

家屋番号四二番一

軽量鉄骨亜鉛メッキ鋼板葺二階建共同住宅

床面積 一階 95.04平方米

二階 95.04平方米

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